R3年度初頭のご挨拶----4月1日のドキドキ

令和3年度の初頭にあたり、ご挨拶申し上げます。例年4月1日は新人が入ってくる日であり、挨拶に訪れてくださる研修医の先生などの対応で慌ただしく過ごしますが、この日は新年度の科学研究費補助金(科研費)の採択内定日で、自分や医局の先生の採択通知にやきもきする日でもあるのです。今回も悲喜こもごも、採択に至らなかった先生は残念ですが、次年度の申請書類を仕上げる時期が10月ですから、すぐに次に向けて進んでいかなければなりません。
科研費取得の成否は申請者が研究に掛ける思いや熱量に依存していると考えます。申請書は審査員に相当インパクトを与える内容でなくてはならず、様々な創意工夫が必要です。使用するフォント、書式、挿入するテーブルや図の選択、構成などに思いを巡らせ、当然申請書を仕上げるのに膨大なエネルギーを要します。臨床に忙殺される先生にとっては良い申請書を仕上げる時間とエネルギーを確保することは至難の技だと思います。
よく業績が先か、研究費採択が先かという議論がなされますが、業績がなければ研究費は採択されませんが、業績をつくるためには研究費が必要であり、鶏と卵の議論に行き着きます。私は迷うことなく、業績が先だと確信します。やはり業績がなくては申請書の迫力、説得力が出てこないからです。そうすると、特に若手の研究者はまずは業績をしっかりと確立することが必要です。いきなり若手が独自で業績を出すことはできないわけですから、研究室が手厚いサポートにより正しい方向に導く必要があります。大学の研究室とはそのようなものであり、また研究に夢を見ながら若手が勝負する土俵であると思います。資金の獲得はその成否を握ります。4月1日が朝からそわそわするのはそのような理由からです。
師匠である故、井上正樹金沢大学前教授が「論文を書くのは、まあ高尚な趣味ですわ」と言われていたのを思い出します。当時趣味という表現に驚きましたが、仕事でなく、義務でもなく、趣味と言ってしまえることに、懐の深さを感じます。やはり好きでやるのが研究であり、研究とは本来そういうものなのだと思います。研究が好きだと感じれる環境を整えたいと、あらためて年度初めに思った次第です。

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