学内講師 石川 雅子


こんにちは。産科婦人科の石川雅子と申します。

今年で12年目になりますが、この12年間は本当にあっという間の12年間でした。もちろん、毎日いろいろな出来事があり、一日として同じ日はありませんでした。大変なことや辛いこともありましたが、それ以上にやりがいがあり、幸せな時間に立ち会うことができた日々をうれしく思う今日この頃です。

私が産婦人科に最終的になろうと思ったのは、そのドラマチックな日々とでもいうのでしょうか。私が5年生の実習の時は当直実習というものがありました。その日、友人とわくわくしながら2段ベットで寝かけていたのですが、2時頃に陣痛発来の妊婦さんが入院したという連絡があり、そのすぐ後に、緊急帝王切開の呼び出しがありました。その時は入院中の妊娠高血圧症候群の妊婦さんが、母体の急激な症状悪化か、胎児機能不全であったかはわかりませんでしたが、病室から先生や看護師さんたちによりベットごと移動され、その後を追って助産師さんと小児科の先生が、インファントウォーマーを駆け足で運び、私たちもハラハラしながらその後を追って手術室に入りました。超特急で着替えて手術室に入った瞬間に、赤ちゃんが取り上げられて、「うぎゃー」と泣いていて・・・・。その時の光景は今でも忘れることができません。「無事に生まれてよかったねー」などと言いながら、今度は自然分娩のほうが進行しているとのことで分娩室に移動しました。その後は、初産婦さんでもあり、数時間後に無事出産となりましたが、その間は、お茶を渡したり、うちわであおいだり、そんなことをさせていただいていました。生まれた時には隣にいた友人が泣いていて、私もなんだか、涙が出た記憶があります。

そして、いまだに、出産のときについ、涙が出そうな時があります。それは年のせいかもしれません。

それはそうと、研修医の時には一度産婦人科を回ることをお勧めします。いつか自分自身のことで(男性にとってはパートナーとのことで)必ずや遭遇する科であるので、知っておくほうがいいと思います。また、この臨床研修医制度の根底にある、誰でもプライマリーケアをできるようにといったところには、産婦人科でいえば、いつかどこかで(救急外来、出張中の公共交通機関 等)、偶然な分娩に遭遇した際に対処できるように(医者であることを名乗り出れないようなことがないように)というところがあると思われます。以前、初期研修医で当科を回った神経内科の先生が救急当直の際に分娩に遭遇し、産婦人科医が到着する前に出産となりましたが、処置ができ、さらにApgar Scoreもつけることができたと教えてくれた時にはうれしい気持ちになりました。


学生のみなさん、研修医のみなさん。

産婦人科は忙しい科であるという印象も強いと思います。ただ、それ以上に、幸せだなとか、よかったなとか思えることのほうが多い科なのかなと思います。また、私の印象では、研修医時代は周りの同級生は、どの科であっても、忙しさとか、大変さはあまり変わらなかったような気がしました。慣れないうちから、要領よくやってQOLが保てる研修医はあまりいないと思います。みんな、自分のために一生懸命になるしかないので、必然的に帰りは遅くなると思います。でも、そうやって頑張っていれば、数年たてば、うまくいろいろなことができるようになり、自分の時間も持てるようになるのだと思います。産婦人科も24時間待機しているわけではなく、そのために当直制度があるわけなので、そこはしっかり休むところは休んでいます。もちろんやりたければ、いかほどでもお産にあたることはできます。

この際ですので一つアピールするのであれば、産婦人科はいろいろな方面で魅力的な科であると思います。

まずは周産期、内分泌・不妊症、腫瘍といったように多岐にわたる分野で、患者さんのためにできることがあります。私も初めは周産期に興味があり産婦人科となりましたが、1年目に体外受精などの生殖補助医療を実際にお手伝いし、初めて知るこの分野に非常に惹かれました。そして今は婦人科腫瘍に重点をおき、診療にあたらせていただいています。患者さんや、御家族の気持ちになり代わることは到底難しいことを感じながらも、それでも、どうにかして、根治を目指すこと、また、大切な時間を過ごせるお手伝いをさせていただけるように、至らない限りではありますが、努力を止まないように日々歩んでいるところです。

また、診断から、治療まで一貫して行えるところも魅力の一つです。実際に患者さんの主訴を聞くところから、最終的に手術までいくまでの中で、疾患のことがよくわかりますし、さらに病理学的検討や、分子生物学的検討ができることで、そのものの成り立ちにまで理解を深めることもできます。

最後にとっておきの魅力としては、女性にとっては妊娠、出産を取り扱う科ということもあり、その点については非常に理解があり、産休・育休といった面についても安心してとらせてもらえるというところです。そのぶん、周りの先生方には非常にお世話になっているのですが、本当によくしてもらっています。

一つに収まりませんでしたが、みなさんが興味を持てる産婦人科になるといいなと思っています。

【資格】
日本産科婦人科学会 認定専門医
がん治療認定医

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