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 学生、研修医の皆様、当教室のホームページにようこそおいで下さいました。平成26年4月1日より教室を担当しております京です。私が赴任してまず心掛けたことは個人がhappyであると実感できることを第一に教室作りを行うということでした。教室の財産は人であります。大学という特性上、教室員はあらゆる点においてヘテロな集団であります。一人一人欠点もございましょうが、必ず優れた点もございます。個人の優れた点を最大限に評価しリスペクトし合うことが最終的には個人の幸福につながるキーポイントであると確信し、この点を医局運営の柱にしたいと考えております。

次いで私が重視するのは大学病院における教育です。「本立ちて、道生ず」。論語のこの教えは、基本的な技術や考え方がしっかりしていれば、その先は自ずから道は開ける、と解釈しております。大学病院は専ら高度な医療を展開する場ではなく、あくまで基本を重んじる場であるべきです。先にも申し上げましたが、大学病院というのは一通り臨床を経験して野心を胸に帰学した個性派集団です。しかし個性派集団でも基本に忠実であることが求められ、基本に立脚して応用があり、その先に個性が表出されるべきです。私はバスケットが好きで、中学、高校、大学とバスケット漬けの日々を送りました。留学したシカゴでNBAの練習を見学する機会に恵まれましたが、そこで見たものは超一流のスター軍団がただひたすら基本練習を反復する姿でした。一流ほど基本の重要性を肌で感じ、繰り返し繰り返し体に覚え込ませるのです 。

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出雲に赴任して私がまず取り組んだ教育は、手術における基本の徹底です。昨今のテレビドラマにあるような神業的技術に価値観を求めるのではなく、解剖に立脚し、慎重で丁寧な手術を行うことが基本中の基本です。そのためには骨盤解剖の深い理解が必須です。ここがあやふやだと、大出血などのいざという時に適切な判断ができません。教室員には骨盤解剖の基本を徹底的に習得してもらっています。

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次いで重視すべきは地域医療です。この課題は特に島根大学に課せられた大きな使命であります。基幹病院でさえその維持が困難なほど当大学の医局員不足は深刻な問題です。しかしこれをチャンスととらえる考え方もあります。地域病院で私たち産婦人科医は当該地域の分娩を一手に引き受ける重責にさらされますが、それは一方で、地域に待望の、新しい命の誕生の瞬間を担うという素晴らしい仕事をさせていただく栄誉に預かれるわけで、仕事をしていてまさにこれ以上の満足感はございません。仕事の充実感を突き詰めると、どれだけ人の役に立っているか、どれだけ人類の繁栄に貢献しているかということに行き着くと思うのですが、産婦人科の仕事はその最たるものの一つだと思います。代わりに誰もいない、自分たちがやらなければ大変なことになるという重責を担う仕事は大変ではありますが、大いにやり甲斐のある仕事ではないでしょうか? もちろん、それに引き替え時間の拘束やQOLの低下といった問題もついて回ります。それを凌駕するやり甲斐を感じるかどうか。要は充実感とQOLのバランスが肝要であり、当医局ではそこにメスを入れてゆきたいと考えております。短期ローテーションで特定の地域にかかる負担を均等化し、テレビ会議などのネットワークを最大限利用してコミュニケーションを図ること、基幹病院同士の人事交流など様々なチャレンジを積み重ねてゆくことで問題点の解決を図りたいと思います。

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研修を行う上でさらに重要であると私が考えるポイントを最後に申し上げたいと思います。それは、臨床と研究の融合という課題であります。そもそも地域医療を求められる地方大学において、医者が研究を行うことにどれだけの意味があるのでしょうか? 研究を頑張り、一応論文にはなったが、医療的には何の役にも立っていないという現状も多々ございます。それでも私は研究を推進することが重要であると敢えて申し上げます。それは研究の成果以上に、それを遂行するプロセスがもっと重要であるからです。研究を行う上で第一に始めることは疑問を持つことです。臨床を行う上でのquestionがあって、それを解決するために研究を行うのが大前提です。その疑問を解決するための仮説を立て、仮説に沿って検証するための実験を計画するわけです。いざ実験を行うと失敗も多々あります。経験上、実験の9割は失敗であると言えるかもしれません。さらに実験結果をどのように解釈するかでその後の方向は全然異なります。そこには深いdiscussionが必要です。このように考えると、仮説を立て、それを検証するための実験計画を練ること、実験結果をdiscussionにより解釈し、さらに前に進んでゆくというプロセスは、実は実地臨床において私共が行っていることと何ら変わりはございません。つまり研究を遂行する上でのscientificアプローチは臨床を行う上で必須の要素なのです。研究的な思考過程を身につけることがその後の長い医師人生に極めて重要であることがおわかりいただけるかと思います。研究を間近で見て、その空気に触れることが出来る大学病院での研修の意義はまさにそういうところにあります。

 私共は産婦人科医になり、命の誕生の現場に携わることができて本当に良かったと実感しております。おそらく皆さん、どこの科に行っても同じように充実感を味わえると思います。医師の仕事とは本当に楽しく、素晴らしいものであるので、科の選択はさほど重要な要素ではありませんが、命の誕生の現場という特別な役割に共感して下さる皆さんとぜひ一緒に働きたいと切に願っております。産婦人科という科に魅力を感じている皆さん、ぜひ勇気を持って飛び込んできて下さい。

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