不妊症

特に病気のない健康な男女が妊娠を希望し、避妊を行わないと一定期間内に大多数の方が妊娠しますが、一定期間を過ぎても妊娠に至らない場合はその後いくらタイミングをとっても自然に妊娠する可能性は低くなり、不妊症と診断する事が出来ます。どのくらいの期間妊娠しなければ不妊症と考えられるのかは年齢によって大きく異なります。20歳代の場合、結婚後2年以内に8割以上の方が自然妊娠に至りますが、年齢が高いご夫婦ではその割合が徐々に低下するため、不妊期間が短くてもその後自然妊娠する可能性は低くなります。WHOの定義では2年間の不妊期間を持つものを不妊症と定義していますが、晩婚化の進む米国では不妊期間1年以上を不妊症と提唱しています。妊娠を希望するけれど出来にくいなという気持ちをお持ちの方は、早めに私達に相談して下さい。特にこれまで規則的に月経が発来していない方や子宮内膜症や子宮筋腫を指摘された事のある方、月経痛が強いという方は原因を精査する必要があります。

どのような検査がありますか?

---------------------

1.内診・経腟超音波検査

婦人科の診察台(内診台)で子宮・卵巣を触診(内診)し、経腟的に超音波プローブを挿入して子宮筋腫や卵巣嚢腫などの異常がないか確認します。

2.子宮卵管造影

子宮口から造影剤を注入し、子宮の形や卵管が閉塞していないかを確認する検査です。多少の痛みはあるかも知れませんが、ご心配される程ではありません。

3.血液検査

生殖関連ホルモンや糖尿病など全身疾患に関する異常がないかどうか血液検査で判断します。ホルモン値は月経周期により変化するため、時期を分けて複数回行うこともあります

4.子宮鏡検査

子宮の内腔に病変がないか直接子宮内にカメラを入れて観察します。

5.MRI検査

超音波検査で子宮や卵巣、卵管に病変が疑われる場合は、体の断面像を撮影することで詳細な情報が得られ、不妊原因の疾患を見つけることが可能です。

6.精液検査

不妊症カップルの半数には男性側の原因もあるとされます。ご主人の精子に異常がないかどうか調べることが重要です。当院では婦人科で検査を行います。

どのような治療がありますか?

---------------------

1.排卵誘発法

卵胞の発育と排卵を補助するために排卵誘発剤を用いることがあります。これは自然に排卵が起こっている患者さんに対しても行うことがあります

2.タイミング法

排卵日を診断して性交のタイミングを合わせる治療です。経腟超音波で卵胞を確認し、排卵日を予測してタイミングの指導を行います。

3.人工授精

精子数が少ない場合や、精子の動きが悪い場合に適応になりますが、タイミング法を繰り返しても妊娠に至らない場合にステップアップとし人工授精を行います。用手的に採取した精液から良好な精子を洗浄・回収して子宮内に注入します。年齢にもよりますが1回あたりの妊娠率は10%程度で、人工授精で妊娠される方はほぼ5回以内にされると言われています。

4.体外受精

左右卵管が閉塞している場合は、自然妊娠は難しく体外受精の適応になります。また、人工授精を複数回繰り返しても妊娠に至らない場合は、治療のステップアップとして体外受精を行います。体外受精は経腟的に卵巣から卵子を取り出し(採卵)、体外で精子と受精させ、受精卵を経腟的に子宮内に戻すという治療です。卵子と精子を培養容器内で媒精させれば、通常翌日には受精しているのが確認できます。精子に異常があったり、免疫的な問題で受精障害がある場合は、卵子と精子の受精が成立しない場合があります。その場合は顕微鏡で観察しながら精子1個を卵に注入する顕微授精を行います。確実に受精卵を子宮内に移植することにこの治療のメリットがあります。2011年現在、日本では3万人を超える赤ちゃんがこの治療で生まれています。体外受精による生産率は32歳までは1回胚移植あたり20%ですが、年齢が高くなると徐々に減少し、40歳を超えると10%以下に減少します。

5.不妊症に対する手術療法

子宮筋腫や卵巣嚢腫などが存在する場合妊娠の妨げになる場合があります。その場合は子宮を温存したまま筋腫核のみを摘出したり、卵巣から嚢腫壁のみを摘出する手術を行う場合があります。多くの場合は腹部に5mm~1cm程度の穴を開け、カメラと鉗子を用いて手術を行う腹腔鏡手術を施行します。また、月経異常や不妊を伴う多嚢胞性卵巣症候群という疾患に対しては、排卵誘発剤が無効の場合、腹腔鏡を用いて卵巣表面を蒸散する多孔術を行う事があります。

当科には生殖医療の専門医が在籍し、専門外来を開設しています。


このページのトップへ